抜毛癖の治療にはいくつかの治療法を組み合わせると効果的です。
習慣逆転法、認知行動療法、マインドフルネスなどの治療方法を紹介しています。
認知行動療法
効果の高い治療法のひとつに『認知行動療法』があります。
認知行動療法は、考え方のパターンを変えることで感情をコントロールする治療法で、うつ病をはじめ様々な精神疾患に対して効果をだしています。
習慣逆転法
ネイハン・アズリン氏が、1973年に出版した「神経症やチックを減らす方法」の中で紹介した方法で、爪噛みやチック、指しゃぶり、抜毛癖といった症状を軽減させるための高い効果があるといわれている治療法です。
参照:(Habit reversal training , Azrin NH,1973
Habit‐reversal : a method of eliminating nervous habits of tic)
習慣逆転法は以下の5つのステップで行います。
1.意識下練習
2.拮抗反応の学習
3.リラクゼーション練習
4.偶然性の管理
5.汎化練習
それぞれのステップについて説明していきましょう。
1.意識下練習
意識下練習は、一言でいうと「記録」することです。
髪の毛を抜いたちぎったりしたらそのたびに記録します。
抜毛は無意識で行われることもしばしばありますが、記録をとることで「私は今、髪の毛を抜いた」と意識することができます。
日時、状況、そのときの感情、抜毛に費やした時間を記録し、第三者的に自分を見ることで、抜毛のパターンがわかります。
私の実験でも、実験の効果を確かめるために必ず手帳に記録を取ります。
たしかに、意識することだけでも症状が軽減されるような気がします。
意識化練習のゴールは次の質問に答えられるようになることです。
・毛を抜くのにどちらの手を使うか?
・どのような状況で抜くか?(鏡を見ているとき、テレビをみているとき、読書しているとき、教室で座っているとき)
・毛を抜き始めるとき、どのような姿勢をしているか?
・まつ毛から抜き始めるのか、あるいは眉毛からか、頭髪からか?
・毛を抜き始めるとき直前に、どのように感じているか?
2.拮抗反応の学習
拮抗反応とは、習慣的な行動をしようとしたとき、別の行動でそれを妨げることです。
抜毛症の場合、手が頭や顔にいく行動を妨げる必要があります。
毛を抜きたいという衝動を感じたら、2分間、両手をぎゅっと握りしめます。
まだ抜きたい感情が治まらないのであれば、更に2分間を続ける。
衝動が治まるまでこれを続けます。
筋肉はふたつの動作を同時にすることはできません。
この拮抗反応を新しく体に学習させることで、古い習慣を消しさることができます。
意識下練習の中で、自分がどのような状況で抜毛行為が行われるかに気付くことができていれば、拮抗反応の学習と合わせただけで大幅な改善効果が見られます。
3.リラクセーション練習
抜毛はしばしば強いストレスを感じたり、不安や怒りの感情がきっかけとなっておこります。
リラクセーションはこのきっかけとなる衝動を軽減させるのに効果的です。
a)筋弛緩法
肩こりを感じるとき、筋肉の緊張を意識することができます。
この筋肉の緊張に気付き、意識的に緊張と弛緩(緩める)ことを繰り返す方法です。
今、右のこぶしにぎゅっと力を入れて緊張状態をつくります。右の手に注意を払いながら、そのまま10秒間保ち、緩める。
緊張状態と弛緩状態の感覚の違いを意識してみます。
それを体の至る部位で行うことで身体の緊張がほぐれ、衝動を抑えることができます。
b)腹式呼吸
腹式呼吸については一般的によく知られているとおりです。
息を吸ったときにお腹がふくらみ、吐いたときにゆるむ。
慣れないうちはお腹に手をやり、動きを意識します。
このとき、「リラックス」という言葉と合わせてやるよい、と書かれていますので紹介します。
息を吸うときに「リ」の音を心の中でゆっくりといい、そして次に吐くときに「ラックス」とゆっくり言う(大声ではなく、そっと発音する)。こんなふうに聞こえるであろう。「(吸い始めると)リィィーー、(吐き始めると)ラァァーーックス」
4.偶然性の管理
古い習慣を消し去り新しい習慣に作り替えるためには、新しい習慣に対してごほうびを与えることです。
ごほうびは、心理学的な言葉で「好子(こうし)」といわれます。
望ましい行動の直後に好子を与えることで、その行動は強化され習慣化されます。
例えば、抜毛をコントロールできたことによって得られるメリットをいつでも見られる状態にしておきます。
手帳でもカードでも携帯電話でもかまいません。自分がいつも持ち歩いているものがいいでしょう。
それを、抜毛の衝動をコントロールできた時に見直します。
こうすることで望ましい行為を強化し、望ましくない行為を弱くすることができます。
5.汎化練習
いままで説明した方法を実際に実行していけば、きっと抜毛症の症状は改善していくでしょう。
しかし、今までのパターンとは別のきっかけで、再び抜毛が悪化する場合もあります。
習慣逆転法によって、一人で部屋でテレビをみているときに起きる抜毛はコントロールできるようになったとしましょう。
そこへ恋人や家族との人間関係の問題と就職活動のストレスが同時に加わったことで再び抜毛が悪化してしまう、
そんなケースがあるかもしれません。
汎化練習はこれらのケースをいくつか予測しておき、習慣逆転法を使ってコントロールに成功したことを事前に想像しておく練習です。
成功パターンをあらかじめ学習しておくことで、実際にその場面になったときにも、衝動をコントロールできるようになります。
もっと詳しく知りたい方は、「強迫性障害からの脱出」という本に書かれているので、一度読んで見ることをおススメします。
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マインドフルネス
呼吸に意識することによって「今、ここ」の自分に気づきます。
続けることで頭と心がスッキリし、ストレス、不安をなくします。
考えすぎる、気持ちを切り替えがうまくできない方にお勧めです。
ネガティブな感情が抜毛をひきおこす
抜毛症で悩む方からこんな相談を受けました。
「意識して克服しようとしても、意識することがツラく難しい。」
「気付くことができない、気づいたときにはもう遅い。やめられない。」
自分に起きていることに気付き、心理学の手法で抜毛の数を減らしていく方法を紹介していましたが、私自身が実体験で気付きに注意して抜毛の数を減らしてきたので気づきが大事だと、勧めていました。
ですが、そもそも気づくこと自体が難しかったのです。
他にも、相談を受けると次のようなことで悩んでいる方が多くみえます。
・イライラして考え事が多く、不平不満、ストレスがたまっている。
・考えすぎるのは性格で、考えすぎを直すことはできない。
・いつまでも終わったことを引きずってしまう。
例えば、「あのときなんであんなことしちゃったのかなぁ・・。なんで私っていつもこうなんだろう、ホント自分が嫌になる」
と、すでに終わった過去のことをいつまでも考えすぎてしまう。
こんな相談が多いです。
頭の中がごちゃごちゃして、思考がグルグルしていると、結果としてイライラ、不安、怒り、落ち込み、突発的な行動が増える、無気力な状態、ネガティブな感情にひきこまれます。
実体験として、このようなネガティブな感情に支配されるほど、抜毛症がひどくなっていくと感じます。
いかにこのネガティブ感情を減らしていくか。
そのためのカウンセリングプログラムなのですが、その前に試してもらいたいのがマインドフルネスです。
マインドフルネスとは
ここで紹介するマインドフルネスは、瞑想(めいそう)がメインです。
瞑想といっても、誰でもすることができ、ヨガや座禅のように場所を選ぶことがないのでいつでもどこでもすることができます。
心理療法として取り上げ始めてきたのですが、いまやgoogleやスターバックス、IBMなどの有名企業でも取り入れられており、アップルのスティーブ・ジョブズ氏、パナソニック(松下電工)の松下幸之助さん、京セラ名誉会長の稲盛和夫さんなどのトップ経営者の多くが瞑想を習慣にしています。
なぜこれほど注目を集めているかというと、続けることで心が穏やかで満ち足りて頭の中がスッキリし、気持ちの切り替えがしやすくなるなど、次のようなたくさんのメリットがあるからです。
マインドフルネスのメリット
・仕事や学習の効率がアップする。
・心が穏やかになる
・心が安定し、自分の感情や思考に気づきやすくなる
・頭がスッキリして、自分を客観的に見ることができる
・自分や他人に優しくなれ、人間関係がよくなる
・寝つきがよくなり、深い睡眠がとれる
・ありのままの自分を受け入れることができ、自信がつく
・自分の中で起きていることに気づきやすくなる。
このように、マインドフルネスのメリットは抜毛症を克服するうえで欠かせないのです。
マインドフルネスの実践 ①姿勢を整える
マインドフルネスの基本は、姿勢を正し、整えることからはじまります。
感情や思考をコントロールするのは簡単ではありませんが、姿勢をコントロールすることは少しの意識でできます。
前かがみの猫背のような姿勢だと肩が内側に向き、肋骨を圧迫し、呼吸が浅くなります。
反対に、姿勢を正すことで胸が開き、内臓の圧迫がなくなることで、呼吸が深くなり気持ちが軽くなります。
正しい姿勢とは、背筋が伸び、首や肩に力が入っていない状態です。
マインドフルネス瞑想の書籍から引用すると、
①頭上からヒモが出ていて、それを誰かに引っぱり上げられるように背筋が受動的に引き延ばされる。
②頭の上に大きな荷物を乗せていて、それを押し返すように腰をすえ、背筋を伸ばす。
③身長計を押し上げるときの感覚で、頭長まで最大限に引き伸ばす。
これを意識することで正しい姿勢を作ることができます。
瞑想をするときは、座禅を組むように座ります。
両足をももの上に乗せるのが難しければあぐらをかくだけで構いません。
楽な姿勢をとります。
椅子に座る場合は背もたれにもたれかからないように背筋を伸ばして座ります。
マインドフルネスの実践②呼吸
姿勢を整えたら次は呼吸です。
イライラしたり、ネガティブな感情に支配されていると呼吸が浅く、早くなります。
反対に、心が穏やかなときは呼吸が深くゆっくりになっています。
呼吸に意識を向けることで自分が今、どういう感情なのかに気づきやすくなり、意識的に深くゆっくりすることで気持ちが落ち着いてくるのです。
マインドフルネスの呼吸は、気持ちいい呼吸であることが条件です。
吸ったり、吐いたりを無理にコントロールせず、がんばらないこと。
これが大切です。
呼吸法は腹式呼吸と胸式呼吸を合わせた「完全呼吸」が理想的です。
完全呼吸とは、吐くときに「腹式呼吸」を意識し、吸うときに「胸式呼吸」を意識すること。
吸う息の終わりでは、胸が内側からひろがっていき、吐く息の終わりでは、お腹が充実していく。そんなイメージで呼吸をしていくと、お腹と胸を使った完全呼吸になります。
これを次のポイントを意識してやってみます。
・吐く息の終わりを少し手伝う
・体を締め付けない服装でおこなう。
・何もしない
・ジャッジしない(瞑想中に気づいたことに、良い、悪いを評価しない、判断しない)
・受けいれる
・毎日やる
瞑想中に、いろいろな思いや考えが浮かぶことがあります。
会社のこと、学校のこと、家族のこと、友人のこと。
後悔したこと、気にしていること、考えすぎていること。
そこに引っぱられないように「今、ここ」に戻してくれる方法が呼吸です。
「今、ここ」の瞬間、瞬間の自分に起こっていることに注意をむけることで、先ほどマインドフルネスのメリットを感じられるようになります。
おススメの紹介
マインドフルネスの本を色々読みましたがコレが一番いいですね。
付録の瞑想誘導CDがいい。
朝起きてすぐと、寝る前にやるだけで心がスッキリします。
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